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離婚

離婚に関係する問題点について弁護士が解説

離婚で後悔しないために──
親権・養育費・財産分与といった離婚に伴って問題となる点を弁護士が解説

広島で離婚、親権、養育費、財産分与に注力する大元・秋山法律事務所の弁護士が解説

弁護士が多くの離婚の相談で「離婚できるかどうか」だけを悩むことはそう多くありません。むしろ悩むのは離婚に付随した親権・養育費・婚姻費用・財産分与・年金分割・慰謝料という離婚に付随して問題になる点であり、しかも2026年4月1日施行の民法改正でルールが大きく動きました。実務が大きく変わっていくことから従前の知識のままでいると問題を見誤ることになってしまします。

まず離婚に伴って問題になる点を一通り整理します。

先に述べたとおり、離婚の紛争は「離婚するかどうか」だけでは終わりません。「とにかく早く離婚届を出したい」という方は多いのですが、条件を決めずに届を出すと、後から後悔することがあります。離婚届を出す前に、離婚した場合にどうなるのか?という全体の見通しを立てることが重要です。

広島で離婚相談を検討している夫婦のイラスト

SECTION 01

離婚の進め方──協議・調停・訴訟の全体像

方法内容ポイント
協議離婚夫婦の話し合いで離婚届を提出日本の離婚の約9割。ただし条件を決めずに届を出すとトラブルの元
調停離婚家庭裁判所で調停委員を交えて話し合い条件がまとまらなければ、まず調停から(広島家庭裁判所に申立て)
裁判離婚調停不成立後、訴訟で解決法律上の離婚原因(不貞・悪意の遺棄・3年以上の生別等)が必要

▼ よくある残念な例

❌ 失敗 1

離婚届を先に出してしまった

養育費や財産分与も決めないまま届を出すと、相手はもう交渉に応じるインセンティブがない。もう離婚はしたんだから、と居直る人も多くいます。

❌ 失敗 2

婚姻費用を請求しないまま放置

婚姻費用は「請求した時点から」が実務の原則。請求をしないと「その間は必要無かったんですね」ということで請求が認められないことも。LINE・メール等でも良いので証拠が残る形で請求していたことを明らかにするべきです。

❌ 失敗 3

財産資料を集めないまま協議を始めた

預金履歴、保険証券、不動産評価、退職金規程。離婚後にこれらを手に入れるのは、想像以上に大変。もう離婚はしたんだから知らんという態度です。

❌ 失敗 4

親権だけ決めて他を後回しに

養育費や面会交流を「後で決めよう」と思っても、結局決まらないケースが多くあります。

離婚は「身分関係」「お金」「子ども」が同時に動く分野です。最初に論点を分けて整理するだけで、結果はかなり変わります。

SECTION 02

親権──2026年4月から「共同親権」が選べるようになりました

改正前と改正後──何が変わったか

改正前(〜2026年3月31日)改正後(2026年4月1日〜)
親権者父母の一方のみ(単独親権)父母双方(共同親権)または一方(単独親権)を選べる
決め方協議または家庭裁判所同左。裁判所は子の利益を最優先に判断
DV・虐待単独親権必ず単独親権。裁判所はDV・虐待のおそれがあるとき共同親権を認めない

共同親権でよくある誤解

「共同親権になったら、子どもを半分ずつの時間で育てることになるのか」──この質問は非常に多いのですが、そうではありません。法務省Q&Aでも、共同親権であっても監護の実態は別途、子の利益を最優先に定めるとされています。一方の親のもとで暮らし、もう一方と定期的に交流する形も当然あり得ます。

もう一つの誤解は、「共同親権だと何をするにも二人の合意が必要で、何も決められなくなる」というもの。これも不正確です。

分類単独で決められるか
日常の行為食事、通学、軽微な医療行為監護親が単独で可能
急迫の事情DV避難、緊急手術、入学手続の期限直前単独で可能
重大な事項転居、進学先、重大な医療行為原則父母で協議。対立すれば裁判所が判断

つまり、「何も決められなくなる」わけでも、「全部自分で決められる」わけでもない。どの事項が日常事項で、どの事項が重大事項か、急迫事情があるかを分けて考えることが大事です。

なお、すでに離婚している方は、改正法が施行されても自動的に共同親権に変わることはありません。変更するには家庭裁判所への申立てが必要です。

SECTION 03

面会交流(親子交流)──養育費との「バーター取引」ではない

面会交流は、子どもと暮らしていない親が子どもと交流する制度です。改正法で名称が「親子交流」に改められ、電話やメール等も含まれることが明確になりました。

面会交流と養育費は別の問題

「養育費を払わないから会わせない」も「会わせないから払わない」も、法的には通らない

子どもの利益が最優先

裁判所は子の年齢・性格・生活環境を踏まえ、精神的な負担をかけないよう配慮する

祖父母等との交流も制度化

改正法で、子の利益のため特に必要があれば、裁判所が父母以外の親族との交流を定めることが可能に

SECTION 04

婚姻費用と養育費──「別居中」と「離婚後」で請求するものが違う

別居中

婚姻費用

夫婦と未成熟の子の生活維持に必要な費用。離婚成立までの間、収入の少ない側が多い側に請求できる。話し合いがつかなければ、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる。

離婚後

養育費

離婚後も、両親がその経済力に応じて子の生活費を分担する。裁判所の算定表(令和元年版)が広く参照されるが、あくまで目安。私学費用や医療費など個別事情で動く。

💡 別居したら、まず婚姻費用の請求を。
婚姻費用は原則として「請求した時点」から認められるのが実務の傾向です。請求がなされていない期間分は請求できない場合があります。別居したら、生活費の請求は最優先で動いてください。

養育費の基本

項目内容
金額の目安裁判所「養育費・婚姻費用算定表(令和元年版)」。双方の年収と子の人数・年齢で算出
算定表はあくまで目安私学進学費、医療費、特別な教育費、住宅事情などがあれば増減の余地あり
終期原則として子が成人するまで。現在成人年齢は18歳ですが、満20歳まで、大学卒業に至るまでとする例もあります。具体的な終期は個別の取決めによる
変更再婚、進学、収入変動など事情変更があれば増額・減額の申立てが可能
2026年4月 改正の目玉

養育費の支払確保が大きく強化されました

CHANGE 1

法定養育費──取決めなしでも請求可能に

養育費の取決めをしないまま離婚しても、子どもと暮らす親は他方に子1人当たり月額2万円を請求できるようになりました。離婚の日から発生し、取決めか審判確定、または子が18歳に達した日のいずれか早い日で終了します。あくまで暫定的な制度で、最終的には適正額を別途定める必要があります。施行前の離婚には適用されません。

CHANGE 2

先取特権──差押えがしやすくなった

養育費債権に先取特権(他の債権より優先して弁済を受けられる権利)が付きました。父母間で文書で養育費を取り決めていれば、公正証書や調停調書がなくても差押えの申立てが可能になります。上限は子1人当たり月額8万円。施行前の取決めは、施行後に発生する養育費に限って適用されます。

この2つは、養育費の不払い問題に対するかなり大きな制度変更です。2026年4月1日前に離婚するのか、後に離婚するのかで使える制度が変わるので、離婚時期を検討中の方は必ず確認してください。

SECTION 05

財産分与──名義が相手でも諦めない

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して取得・維持した財産を離婚の際に分ける制度です。「相手名義だからどうしようもない」と諦める方がいますが、形式的な名義だけに捕らわれるのではなく、実質的に判断することになっています。婚姻中に協力して築いた財産であれば、どちらの名義であっても精算の対象です。逆に、婚姻前から持っていた財産や相続・贈与で得た財産は「特有財産」として原則対象外になります。

⭕ 対象になる(共有財産)

  • 婚姻中に貯めた預貯金(名義を問わず)
  • 婚姻中に購入した不動産・車
  • 退職金(婚姻期間に対応する部分)
  • 保険の解約返戻金
  • 株式・投資信託(婚姻中に取得したもの)

❌ 対象にならない(特有財産)

  • 婚姻前の預貯金
  • 相続・贈与で取得した財産
  • 婚姻前に取得した不動産

実務で本当に揉めるのは「割合」より「中身」

財産分与の相談で多いのは「何割もらえるか」ですが、実務で難航するのはむしろ中身の確定です。

1
基準時の問題
いつの時点の財産で切るか。通常は別居時だが、ここが争いになることは多い
2
住宅ローン付き不動産
残債が時価を上回るオーバーローンの場合にどう扱うか。売るのか、一方が住み続けるのか
3
退職金の評価
まだ支給されていない退職金をどう見積もるか。勤続年数や退職金規程の確認が必要になる
4
別居後の預貯金の動き
別居後に使い込まれた分をどうみるか。浪費の立証は想像以上にハードルが高い
5
事業用財産
個人事業や法人の資産と個人の財産の線引き。税務的な点で問題になることも多く、税理士に相談しながら進めることも多い。

💡 割合を争う前に、まず資料を押さえる。
預金履歴、保険証券、不動産の査定書、ローン残高証明、証券口座の取引履歴、退職金規程。離婚を考え始めた段階で手元に入るものはコピーを取っておいてください。離婚後に入手しようとすると、相手が開示に応じないケースが普通にあります。

改正法で変わった3つのルール

項目改正前改正後(2026年4月1日〜の離婚)
請求期限離婚後2年離婚後5年に延長
2分の1ルール実務慣行として定着条文で明文化(寄与の程度が明らかに異ならない限り等しいと推定)
財産情報の開示任意の開示に頼るしかなかった裁判所が当事者に財産情報の開示を命じることが可能に

⚠️ 注意:2026年3月31日以前に離婚した場合は、改正後であっても請求期限は従前どおり2年です。どのルールが適用されるかは離婚成立日で決まります。

離婚問題で悩む母子のイラスト

SECTION 06

慰謝料と年金分割──財産分与とは別の話

慰謝料──離婚したからといって当然に出るものではない

慰謝料は、相手の不法行為で受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。「離婚=慰謝料がもらえる」と思っている方は少なくありませんが、有責行為がなければ慰謝料は発生しません。

典型場面ポイント
不貞行為(浮気・不倫)配偶者だけでなく、不貞相手にも請求可能な場合がある
DV(身体的・精神的暴力)診断書、写真、相談記録が重要な証拠になる
悪意の遺棄正当理由なく同居・協力・扶助義務を果たさない場合

財産分与は「共有財産の清算」、慰謝料は「不法行為に対する賠償」です。同時に話し合われることが多いですが、根拠も計算方法もまったく別の問題です。

年金分割──協議離婚の際には忘れがちです

項目内容
対象婚姻期間中の厚生年金記録(国民年金は対象外)
請求期限離婚の翌日から2年以内(改正後も変わっていない)
種類合意分割と3号分割の2種類

⚠️ 見落としが多い2つのポイント

① 「情報通知書を取った」だけでは年金は分割されません。年金事務所で請求手続まで完了して初めて分割が実行されます。通知書を取って安心してしまう方が意外と多い。

財産分与の期限は5年に延びましたが、年金分割は2年のままです。ここを混同すると致命的です。

SECTION 07

DV・虐待がある場合──手続きより先に安全確保

DV(配偶者からの暴力)や虐待がある事案では、離婚条件の前に身の安全を確保することが最優先です。法的手続きはその後で組み立てられます。

▼ DV・虐待がある場合の対応フロー

1
安全の確保
配偶者暴力相談支援センター、シェルターの利用を検討。まず逃げること
2
証拠の保全
診断書、写真、相談記録、メールやLINEの履歴。消される前に保存する
3
保護命令の申立て
裁判所に申立て。接近禁止命令、退去命令など
4
住所の秘匿
住民票の閲覧制限、裁判所への住所秘匿の申出。広島家裁でも知られたくない情報がある場合の相談を案内している
5
弁護士への相談
連絡方法の設計、調停・訴訟の進め方を安全な形で組み立てる

改正法でも、DV・虐待のおそれがある場合は裁判所が必ず単独親権とすることが明記されています。共同親権の導入でDV事案が不利になるわけではありません。

SECTION 08

手続きの全体スケジュール──期限を逃さないために

時期手続き備考
別居直後婚姻費用の請求検討後回しにすると遡って認められにくい
離婚時親権・養育費・親子交流・財産分与・年金分割の取決め離婚届を出す前に条件を固めるのが鉄則
離婚後2年以内年金分割の請求期限厳守。改正後も2年のまま
離婚後5年以内財産分与の請求2026年4月以降の離婚が対象。改正前は2年
損害を知ってから3年慰謝料の請求不貞行為を知った時点から起算(不法行為の時効)

CONCLUSION

まとめ:離婚で後悔しないために

離婚届の前に条件を整理

親権・養育費・財産分与・年金分割の見通しを立ててから届を出す

別居したら婚姻費用を早めに請求

放置した期間は戻ってこない

財産資料を早い段階で確保

預金通帳、保険証券、不動産資料、給与明細、退職金規程のコピー

共同親権を正しく理解する

「半分ずつ育てる」制度ではない。日常の行為と重大事項を分けて考える

年金分割の期限(2年)を忘れない

財産分与が5年に延びても、年金分割は2年のまま

DV・虐待は安全確保が最優先

保護命令・住所秘匿・証拠保全を弁護士と一緒に

広島で離婚に関するご相談をお考えの方へ

「まだ離婚するか、どうしたらいいか分からない」
という段階でも構いません

大元・秋山法律事務所(広島弁護士会所属)
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