相談前の状況
産婦が帝王切開術で正期産新生児(体重、AP共に正常)を出産した当夜、授乳のため母子同室を実施していたところ、看護師が退室後に新生児が心肺停止状態となりました。直ちに蘇生措置が実施されて心拍・呼吸は再開しましたが、低酸素性虚血性脳症・脳性麻痺のため寝たきり状態となりました。
ご家族より、
・監視義務違反・経過観察義務違反:帝王切開後あまり時間が経過していない深夜の授乳中に、看護師が一定時間以上、目を離さずに経過観察すべき義務を負っていた。
・説明義務違反:母子同室についてのリスクの説明をしていない
をはじめとする過失を主張し、数億円の損害賠償を請求しました。
当事務所のサポート
当事務所は医療機関側代理人として、事実関係の整理と医学的根拠の構築に努め、裁判所にわかりやすく医療機関の対応に問題がないことを説明しました。具体的には、以下の対応を行いました。
・新生児の急変予見可能性の否定
原告新生児は正期産正常新生児であり、一切の異常所見がなく、急変を具体的に予見することは不可能であったことを、被告病院の診療記録と日本未熟児新生児学会・AAP/ACOG等のガイドラインに基づき論証しました。
・母親の看護能力に関する主張への反論
原告は母親が意識朦朧状態であったと主張しましたが、看護師の呼びかけに即応し自力で体位変換をしていた事実、退室時点での薬効消退を示す医薬品論拠などを積み上げ、母親が新生児の異変に対応できない状態であったとの主張を否定しました。
・経過観察義務の医療水準論
10〜15分間隔の常時監視が全国の一般産科病棟で実施されているとする原告主張の根拠を徹底的に弾劾し、授乳中の正常新生児に対する常時付添義務が当時の医療水準を形成していないことを、文献・学会見解をもとに示しました。
解決後の成果
裁判所において、請求が全部棄却されました。
判決では、
・正期産正常新生児に対し、母子同室中の授乳時に常時付き添う義務は、当時の医療水準として認められない
・帝王切開後の母親の意識状態について、術後投薬の影響を考慮しても、新生児の異変に対応できない状態にあったとは認められない
・急変後の説明についても、不法行為を構成するような虚偽説明とは認められない
と判断され、医療機関側の責任は全面的に否定される結論となりました。
本件は、正常新生児の急変という予測困難な事態が生じた場合であっても、医療機関の管理体制が当時の医療水準に合致していれば過失とはならないという医療訴訟の基本原則を確認した重要な事例です。
新生児医療・産科に関わる医療過誤訴訟でお悩みの医療機関様は、まずはご相談ください。