ホーム コラム 退職を考えている人が落とし穴にハマらないために
労働

退職を考えている人が落とし穴にハマらないために

退職を考えている方へ──
さまざまな落とし穴にハマらないために

広島で労働問題に力を入れている大元・秋山法律事務所の弁護士が解説

「入社してみたら話が違った」「もう限界かもしれない」「休み明けから行く気がしない」──退職を考え始めたとき、ネットで検索すると退職代行サービス、退職給付金サポート、その他怪しげなSNS広告が山ほど出てきます。

重要な点は、退職そのものは、基本的に自分でできます。法律上、正社員(無期雇用)なら退職の申入れから2週間で辞められるのが原則です。会社が「認めない」と言っても、それだけで退職が止まるわけではありません。

問題は「辞めること」そのものではなく、辞め方を間違えることと、退職に便乗した怪しいサービスに引っかからないこと。この記事では、退職で本当に気をつけるべき落とし穴を整理します。

SECTION 01

退職は自分でできる──
まずこれだけ知っておく

正社員なら原則2週間で辞められる

無期雇用なら、退職届を出して2週間で終了。会社の承諾は法律上の要件ではない

有期契約は少し注意

契約社員等は途中退職に別の注意が必要。契約書を確認した方がよい

入社直後は有給がまだない

法定年休は原則6か月継続+8割出勤で発生。入社すぐの時期はないことが多い

つまり:「退職すること自体」にお金を払う必要はありません。退職届を書いて、証拠が残る形(内容証明やメール、LINE等)で会社に届ければOKですし、机に辞表を置いて去ることもできます(もちろん、机の上の辞表などしらない、と言われるリスクはあります)。

FAQ──会社からよく言われることへの回答

← 横にスクロールできます →

Q1

「引継ぎが終わるまで辞めさせない」と言われた

引継ぎは望ましいことですが、引継ぎが完了しないと退職できないという法律はありません。無期雇用なら退職の申入れから2週間で雇用は終了します。引継ぎを理由に退職を無期限に引き延ばすことはできない。もちろん円満に進めるに越したことはないですが、会社側の都合で退職日を一方的に延ばされる必要はありません。

Q2

「引継ぎしないなら損害賠償する」と脅された

引継ぎ不備を理由とする損害賠償請求が認められるのは、極めて例外的な場面に限られます。通常の退職で、しかも会社側にも引継ぎ体制を整える時間があった場合、裁判で認められる可能性はかなり低い。「損害賠償」という言葉で脅して退職を撤回させようとする会社は珍しくないですが、真に受ける必要はありません。

Q3

「代わりの人間を見つけてこい」と言われた

後任の採用は会社の仕事であって、辞める従業員の義務ではありません。人員の補充は使用者が行うべきことです。「代わりを連れてくるまで辞めさせない」に法的根拠はない。

Q4

「退職届は受け取らない」と言われた

退職届の受取りを拒否されても、退職の意思表示は到達すれば効力を生じます。内容証明郵便で送れば、「届いていない」と言い逃れることはできません。口頭で伝えるだけだと「聞いていない」と言われるリスクがあるので、書面での通知が安全です。

Q5

「誓約書にサインしないと退職手続きしない」

競業避止義務や秘密保持の誓約書を退職時に求められることがありますが、サインしなければ退職できないということはありません。内容に納得できないなら、サインせず持ち帰って弁護士に見せるのが安全です。

Q6

退職代行業者と弁護士の一番の違いは?

会社と法的に交渉し、請求し、最後まで代理できるかどうか。退職代行業者は「伝える」だけ。伝える以上の代理を行うことは弁護士法違反となります。未払賃金、残業代、ハラスメントが絡むなら、この差は決定的です。

Q7

SNSの「退職給付金サポート」は使ってよい?

使わない方がよい。以下のとおり「退職給付金」という公的制度は存在しない。国民生活センターが注意喚起を出すレベルのトラブルが多発。雇用保険はハローワーク、労災は社労士か弁護士が正規の相談先です。

SECTION 02

落とし穴①──
SNSの「退職給付金サポート」に気をつけて

最近「そういえば」とご相談を受けることがあります

私はSNSで、「楽に稼げる」、「簡単な荷物運びをするだけ」といったキャッチーで怪しげな臭いしかしない広告の詳細をクリックするのが趣味なのですが、最近やたらと目につくのが「退職給付金」「退職手当金」の名のもとに、「年収200万円の人!400万円!!年収300万円の人!600万円!!」と煽る広告です。生成AIかスーツを着た役者のおっさんなのか分からない人物がひとり芝居をしているみすぼらしい宣伝です。

あんなものは使ってはいけません。

⚠️ 何が問題なのか

まず、「退職給付金」という公的制度は存在しません。彼らが言っている「給付金」の正体は、多くの場合、雇用保険(失業保険)の基本手当の受給期間を延ばすために「特定理由離職者」等の認定を狙うもの。なかには、労災保険を受給するために、うつ病の診断を受けるためのマニュアルまで送ってくるケースが報告されています。

国民生活センターは2025年12月に異例の注意喚起を行い、相談件数が前年度比2.4倍に急増したと発表しました。サポート費用20〜30万円を先払いさせておいて、約束どおりの給付が出ない、解約しようとしたら高額な違約金を請求された──こうしたトラブルが続出しています。

詐欺と断定はしませんが、極めて詐欺的・悪質なビジネスモデルであり、絶対に利用すべきではありません。ここ最近は退職給付金とは・・・という注釈が動画の左上の方にうすーく白い文字で表示されているのがほとんどです。広告主がリスク回避のために入れているのでしょうが、もちろん多くの人は気が付きませんし、そもそも色合い的にも文字のポイント的にも読めません。

👉 国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意」(2025年12月3日)

❌ こんな広告は危ない

  • 「退職給付金」「国が作った神制度」
  • 「年収の2倍がもらえる」
  • 「独自のノウハウで受給額を数百万円増やせる」
  • 「自己都合でもすぐ給付」

⭕ 本当に相談すべき相手

  • ハローワーク(雇用保険の正規窓口)
  • 社会保険労務士(労災・傷病手当金等)
  • 弁護士

労災申請が必要な場面なら、社労士か弁護士に相談してください。SNSの「申請サポート」業者ではありません。単に公的に支給される金銭を大幅に中抜きされるだけです。生活保護支給申請ビジネス同様、本来あなたが支給できる金銭に寄生しようとしている人の広告です。

SECTION 03

落とし穴②──
退職代行業者のリスク

退職代行業者にできること

法的には「退職の意思を会社に伝える」だけ。これは使者(メッセンジャー)としての行為で、ここまでなら違法ではない。

でも、それだけなら退職届を内容証明で送っても同じことです。

退職代行業者にできないこと

  • 未払賃金や残業代の請求・交渉
  • ハラスメントの慰謝料請求・交渉
  • 会社との示談交渉
  • 退職条件の調整

交渉に踏み込んだら弁護士法違反(非弁行為)。2026年には退職代行「モームリ」の運営会社社長が非弁提携の疑いで逮捕・起訴されています。

💡 要するに:「辞める」だけなら自分でできる。「辞める+お金やトラブルの整理」が必要なら弁護士。退職代行業者は、その中間のどっちつかずの位置にあります。

SECTION 04

弁護士が必要なのは
こういう場面

退職自体は自分でできます。でも、次のどれかに当てはまるなら、弁護士に相談した方が結果的に早い。

場面 1

給料・残業代を請求したい

最後の給料が少ない、残業代が出ていない、控除がおかしい──これは連絡ではなく法的な請求の話

場面 2

ハラスメントを請求したい

パワハラ、セクハラで辞める場合。証拠整理、会社への請求、示談交渉、損害賠償まで見据えるなら弁護士の領域

場面 3

会社がまともに対応しない

「辞めるなら損害賠償する」と脅される、退職届を受け取らない、誓約書にサインしろと言われる、有給を使わせない──こういう会社相手に伝言係を立てても意味がない。法的に対応できる代理人が必要です

SECTION 05

やってはいけないこと

❌ 無断欠勤を続ける

❌ 会社のPC・顧客情報を持ち出す

❌ SNSで感情的に会社を攻撃

❌ 口頭だけで済ませて証拠を残さない

❌ 焦って退職代行業者に丸投げ

❌ SNSの「退職給付金サポート」に申し込む

辞め方を間違えると、本来もらえるお金の回収が難しくなることがある。怪しいサービスに先払いでお金を渡すと、それ自体が損失になる。落ち着いて、正しい相手に相談するのが一番の近道です。

SECTION 06

退職の動き方──3ステップ

1
証拠を確保する

📄 雇用契約書・労働条件通知書
💰 給与明細
⏰ タイムカード・シフト表
📱 ハラスメントのLINE・メール・録音
2
自分のゴールを決める

🚪 とにかく辞めたい → 自分で退職届
💰 給料・残業代も請求 → 弁護士
⚖️ ハラスメントも請求 → 弁護士
🏥 労災申請が必要 → 社労士 or 弁護士
3
正しい相手に相談する

SNSの「退職給付金サポート」でも退職代行業者でもなく、ハローワーク、社労士、弁護士。遠回りに見えて、これが一番早くて安全です

広島で退職・未払賃金・ハラスメントの相談をしたい方へ

退職だけなら自分でできる。
でも、お金やトラブルも整理したいなら。

退職、未払賃金、残業代、ハラスメント、会社との交渉──
法律事務所への相談が、結局は一番の近道です。

大元・秋山法律事務所(広島弁護士会所属)
〒730-0013 広島県広島市中区八丁堀11-10 KSビル8階
TEL: 082-221-2221

※本稿は一般的な情報提供であり、個別事案の結論を保証するものではありません。

カテゴリー: 労働