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大元・秋山法律事務所OMOTO & AKIYAMA LAW OFFICE

開示請求を受けた医療機関・診療情報の管理担当者へ

カルテ開示・診療記録の実務

カルテの開示は、原則として応じる必要があります。開示に要する費用は、実費を踏まえた合理的な範囲で請求できます。開示を拒める例外的なケースや、妥当なコピー費用・手数料の決め方など、迷う点があれば弁護士にご相談ください。

病院の窓口で開示請求書と本人確認の資料を受け付ける場面
医療機関・施設側の
法律相談

当事務所は、医療機関側の立場からカルテ開示や診療記録の管理についてご相談をお受けしています。請求者の代理権の確認、ご家族への開示範囲、開示手数料の決め方など、現場で迷う点に法的な根拠をもってお答えします。このページは民間の病院・クリニックを前提としており、国公立病院等では設置主体に応じた手続を確認します。

01

カルテは原則開示。受付で確認すること

患者さんから「カルテを見せてほしい」と請求されたら、医療機関は原則として開示しなければなりません。個人情報保護法33条や厚生労働省の指針でも原則開示が義務づけられています。拒否できるのはごく限られた例外だけです。

開示請求書が届いたら、受付で放置せず、すぐに院長や医療安全管理部門へ報告してください。開示を求めているのが本人か代理人か、対象となる診療期間はいつか、紙のコピーかデータ提供かを速やかに整理します。

窓口で「何のために開示するのですか」と理由を尋ねてはいけません。厚生労働省の指針は、申立ての理由を尋ねることを不適切としています。「裁判に使うかもしれないから」という見立ては、開示を拒む理由にはなりません。理由を聞き出そうとせず、淡々と本人確認を進めてください。

弁護士名義の書式で請求が届いた際、「病院指定の申請書でないと受け付けない」と門前払いするのは危険です。書式の形式的不備を口実に開示を引き延ばした歯科医師に対し、裁判所が22万円の慰謝料支払いを命じた判例もあります(東京地判平成23年1月27日)。必要な情報が書面から読み取れるなら、そのまま受け付けるのが賢明です。

02

本人・代理人・ご遺族で確認手順を分ける

請求者が本人であれば、免許証などで本人確認を行います。弁護士やご家族からの請求では、患者さんとの関係と、委任状など代理権の根拠を必ず確かめてください。弁護士名義の文書だから確認が要らないわけでも、「家族だから見せて当然」と言われて同意なしに出してよいわけでもありません。

受付時に区別する請求者の立場
請求者施設で確認すること
患者本人本人確認、対象となる診療期間、求められた記録と方法。
法定代理人・任意後見人資格や権限の範囲と、本人の状況。未成年者では疾病の内容も確認。
本人から権限を与えられた代理人委任の内容、権限の範囲、本人と代理人の確認。
ご遺族患者との関係と指針上の位置づけ。生存する本人の請求とは根拠を分けて確認。

未成年者や判断能力に疑義がある場合

満15歳以上の未成年の患者さんについては、疾病の内容によって本人のみの請求を認め得る、というのが指針の考え方です。思春期の心の不調や産婦人科の診療など、親に知られたくない内容のときは、親権者への開示がかえって本人の不利益になることもあります。年齢や家族関係だけで窓口の判断を決めず、内容に応じて確認してください。

家族同士の意見が異なる場合には、誰が何を求め、どの権限を示しているかを整理します。診療に同席していたこと、費用を支払っていること、身元保証人であることは、それぞれ確認すべき事情ですが、開示の権限と当然に同じではありません。施設側が一人の説明だけで関係を決めつけないよう、確認事項を明確にします。

ご遺族の請求は、別の根拠で検討する

亡くなった患者さんのカルテは、個人情報保護法の開示請求の対象ではありません。法律上の個人情報は「生存する個人」に関する情報に限られるためです。ただし、厚生労働省の指針により、配偶者、子、父母などのご遺族に対しても、原則として診療情報を提供することとされています。

ご遺族から開示を求められたときに、「相続人全員の同意書を持ってきてください」と求める運用は、指針上の要件ではありません(平成30年7月20日の通知でも同様です)。指針がいうご遺族は、患者さんの配偶者、子、父母及びこれに準ずる者です。内縁関係や同性パートナーなど確認が必要な場合も、一律に対象外と決めず、患者さんとの関係を確かめて判断してください。

ご遺族からの連絡には、開示の請求と診療経過の説明の要望が併せて記載されていることがあります。記録を渡す手続、説明の場を設けること、個別の質問に回答することを区別し、誰が窓口になるか、どの順序で連絡するかを院内で決めます。

03

開示範囲の確認と通知文の作成

開示する記録と第三者の情報を確認して書類を準備する場面
何を、誰に、どの方法で提供するか。

カルテの開示を拒めるのは、法律上ごく例外的な場合に限られます。個人情報保護法33条2項ただし書は、本人又は第三者の権利利益を害するおそれ、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれ、他の法令に違反する場合を挙げています。「医療ミスを追及されそうだから」「見せると訴訟になりそうだから」という漠然とした不安は、開示を拒む理由になりません。

  • 対象記録
  • 第三者の情報
  • 通知文

「医師の個人的なメモや主観的な所見が書いてある」という理由で黒塗りすることもできません。国のガイダンスでも、カルテ全体が患者の個人データであり、医師の個人情報であることを理由に隠すことはできないと明示されています。

開示前の確認手順

対象を揃える

請求された期間や記録を確認し、関係部署から資料を集めます。含めるべき記録と、保管していない資料を区別します。

問題箇所を確認

第三者の情報など、個別の検討が必要な部分を特定します。記録全体を一括して判断せず、その部分を開示する場合の影響を確認します。

方針を文書化

全部開示・一部開示・不開示の判断と理由を整理し、通知文、提供方法、問い合わせ先を確認します。

全部又は一部を開示しない場合は、同法33条3項により遅滞なく通知します。理由の説明は同法36条の努力義務です。また、診療情報の提供等に関する指針は、提供を拒む場合には原則として文書で理由を示し、苦情処理の体制も説明する取扱いを定めています。施設の通知文は、これらの位置づけを踏まえて検討します。

指針で提供を拒み得る場合は、第三者の利益を害するおそれと、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれの二つです。個人情報保護法の不開示事由とは、根拠と文言を混ぜないようにします。精神科の記録や家族から提供された情報についても、具体的な内容と影響を個別に確認します。

一部を開示しない場合は、対象箇所、判断した担当者、判断の根拠が後から確認できるようにします。院内の検討用資料と、実際に提供した写しを取り違えない管理も必要です。追加請求や問い合わせが届いた場合に、前回の対応内容を確認できる状態にしておきます。

04

開示に要する費用と提供方法

開示に要する費用は、請求できます

カルテ開示にかかる費用は、患者さん側に請求できます(個人情報保護法38条1項・2項)。コピー代の実費だけでなく、記録を点検し準備するためにかかった人件費が実費に含まれ得ることも、厚生労働省の通知で示されています。ただし金額を一律に定めることが不適切となる場合もあり、実費を勘案して合理的と認められる範囲にとどめる必要があります。

費用の内訳と算定の考え方を、請求者へ説明できるようにしておきます。平成30年7月20日医政医発0720第2号の通知は、個々の請求によって必要な費用が変わることから、一律に料金を定めることは不適切となる場合があるとしています。費用の計算や院内の運用にご不明な点がある場合は、ご相談ください。

請求された方法での提供を検討する

開示は、電磁的記録の提供を含め、本人が請求した方法で行うことが原則です。その方法での開示が困難な場合は書面による提供となります。院内で普段使用する様式や出力方法だけを基準にせず、請求された方法で対応できるか、準備に何が必要かをシステム担当者等と確認します。

電子カルテや画像の出力には、複数のシステムや部署が関わることがあります。出力した資料に対象期間の漏れがないか、別の患者の情報が混ざっていないか、記録の順序や読み取りに問題がないかを確認します。開示する方法の検討と、記録の内容を変更することは別の作業です。

「担当医が同席して説明する日までカルテは渡せない」という対応も不適切です。医師の立ち会いを開示の必須条件にしてはならないと厚労省通知で明示されています。説明の面談とは切り離し、準備ができたカルテのコピーを先に交付してください。

請求の到達から2週間が経過する前には、原則として開示を求める訴えを提起できませんが、請求が拒まれた場合は例外があります。こうした制度上の期間とは別に、記録の収集や確認に時間を要する場合には、現在の状況や連絡の予定を整理します。連絡がないまま放置されたと受け止められない運用を考えます。

05

記載漏れ・訂正・電子カルテの履歴に対応する

電子カルテの変更履歴と原記録を照らし合わせる場面
記録の経過を、後から確かめられるように。

開示請求を受けてカルテを見直したとき、書き忘れに気づいても、元の記録を消したり上書きしたりしてはいけません。裁判で「改ざん」と判断される最大の原因になります。追記する場合は、「〇月〇日追記、医師〇〇」と日時と氏名を書き添え、後から加えたものだと一目で分かるように残してください。

  • 元の記録
  • 修正履歴
  • 保管方法

追記や訂正について当事務所に相談いただく際は、元の記載、追加したい内容、その根拠となる資料、気づいた経過を確認します。紙の記録か電子カルテかによって操作は変わりますが、訂正前の内容と変更の経過を確認できるようにするという観点は共通します。記載方法の詳しい解説は関連コラムでご案内しています。

避けたい対応

  • 元の記載を消して、初めから書いてあったように整える
  • 複数の職員の説明を揃えてから元記録を書き換える
  • 履歴の仕様を確認せず「全部残る」と説明する

整えておきたい対応

  • 元の記載を残し、追記の日時・担当者・根拠を明確にする
  • 各職員の記録と聞き取り内容を区別して保管する
  • システムの出力・保存仕様を担当者や事業者に確認する

修正履歴とアクセスログを混同しない

入力・修正の経過を示す履歴と、閲覧や操作を示すアクセスログは、確認する目的が異なります。何が記録され、どの期間保存され、どの形式で取り出せるかは、使用するシステムの仕様や運用によります。「ログは消せない」「全ての操作を確認できる」と一律に説明せず、確認できた内容を整理します。

事後入力や代行入力がある施設では、実際の行為の日時、入力の日時、入力した者や確認した者を、どのように記録しているかを確認します。システム上の表示だけで経過を誤解されないよう、院内の記載ルールと出力した記録の関係を把握しておきます。変更を行う場合には、実務を担う部署の運用も合わせて検討します。

履歴やログ自体を求められた場合も、請求内容、対象となる情報、取得できる範囲を確認します。まずシステム担当者に出力を依頼し、その資料が何を示すものかを把握したうえで、提供の判断と説明を検討します。技術的な調査と法的な開示判断の役割を分けると、確認漏れを減らせます。

06

保存期間と証拠保全に備える院内体制

診療録は医師法24条2項により5年の保存が求められます。病院の診療に関する諸記録は、医療法施行規則20条10号に2年の保存に関する定めがあります。記録の種類や施設形態によって確認すべき規律が異なるため、全ての医療記録を同じ期間で処理しないようにします。

事故や紛争が見込まれる事案の記録は、通常の保存期間にかかわらず、解決まで残すことが実務上重要です。紙の診療録だけでなく、画像、看護記録、説明・同意の資料、対応記録、関係する履歴など、何を保管しているかを把握します。通常の廃棄やシステム更新の対象にならないよう、関係部署に確認します。

証拠保全の決定が届いたとき

裁判所の証拠保全(民事訴訟法234条)は、事前の予告なく突然やってきます。決定書が届いてから数時間後に裁判官と相手方の弁護士が来院し、カルテの提示を求められます。受付の職員が慌てないよう、裁判所から連絡があったら直ちに院長と顧問弁護士につなぐ流れを決めておいてください。

証拠保全の当日にカルテを書き換えることは絶対にやめてください。当日にカルテを改ざん・廃棄した病院に対し、裁判所が1,700万円の慰謝料支払いを命じた判例もあります(甲府地判平成16年1月20日)。裁判官が到着するまでの間に記録を触ってはいけません。ありのままの状態で提示し、すぐに弁護士を呼んでください。

ご相談の前に

お手元の資料を確認

相談に向けた資料の確認

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手元にある資料にチェックできます。揃っていない段階でもご相談いただけます。

紛争が起きてから保管場所を探す負担を減らすには、平常時の管理も必要です。紙と電子の記録が併存している場合、過去のシステムから移行した記録がある場合、外部に保管を委託している場合には、取り出す方法と担当者を確認しておきます。保存の担当者が交代しても、必要な資料を確認できる引継ぎを整えます。

07

手続や費用に、ご不明な点があるときは

カルテ開示の基本を踏まえても、実際の対応で判断に迷う場面はあります。請求者の確認、開示する範囲や方法、費用の算定、第三者の情報の扱いなど、ご不明な点は何なりとご相談ください。現在の運用や請求内容を伺い、医療機関側の立場で手続の進め方をご案内します。

  1. 01

    開示前の確認

    受付資料と記録を確認し、開示範囲・方法と、追加の確認事項を整理します。

  2. 02

    通知文・手順の整備

    一部開示や不開示の通知、受付から提供までの手順、院内規程の見直しを支援します。

  3. 03

    紛争・証拠保全への対応

    依頼内容に応じ、相手方との連絡・交渉、証拠保全当日の立会い等を検討します。

院内規程を整える際は、受付担当者が確認する範囲と、医療安全管理者や診療情報管理の担当者へ判断を求める事項を分けます。例外的な案件の判断者を決め、請求を受けてから記録を提供するまでの経過が残る手順を作ります。施設の既存の書式を確認したうえで、必要な部分から見直すことも可能です。

医療機関からの初回相談は30分無料です。記録の分量や依頼する業務によって対応範囲は異なりますので、まず請求の概要と現在の対応状況をお知らせください。個別の文書作成や紛争対応の費用は、ご依頼前にご説明します。

08

よくあるご質問

Q

弁護士からの開示請求は、院内書式でなくても受け付けますか。

書式の違いだけで判断せず、請求者、代理権、対象記録、提供方法など必要な事項を確認します。足りない事項がある場合は、何のために何を補充してもらうかを具体的に伝えます。請求書を確認しないまま、一律に出し直しだけを求める運用は見直します。

Q

ご遺族の一人からの請求に、全員の同意は必要ですか。

相続人全員の同意は、診療情報の提供等に関する指針上の要件ではありません。請求者と患者の関係、指針上のご遺族の位置づけを確認します。死亡した患者の情報について、個人情報保護法33条の本人の請求と同じ根拠で処理しないよう注意します。

Q

カルテの記載漏れに、開示の準備中に気づきました。

元の記録を残し、何を根拠に補うのかを確認します。後日の追記であることや、追記の日時・担当者を明確にし、過去に作成した記録と混同されない方法を検討します。訂正前の記録、補う内容と根拠となる資料をご用意ください。

Q

医師が同席できる日まで、開示を待ってもらえますか。

医師の立ち会いを開示の条件とする運用は、不適切とする通知があります。記録の提供と診療経過の説明の機会を分けて検討し、開示の準備状況や希望する方法を確認します。面談の日程だけを理由に、開示手続を一律に止めないようにします。

Q

電子カルテの履歴も全て出さなければなりませんか。

請求された内容、対象情報、実際に保存・出力できる履歴を確認する必要があります。システムによって仕様が異なるため、一律の回答はできません。システム担当者等と事実関係を把握したうえで、提供の範囲と説明の方法を検討します。

09

医療機関・施設からのご相談

カルテの開示は原則として応じ、費用は実費を踏まえた合理的な範囲で設定します。開示する範囲、費用の計算、通知文や院内の手続など、ご不明な点はご相談ください。医療機関側の立場で、現在の運用に即してご案内します。

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掲載原稿作成日:2026年9月15日

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