遺言書と聞くと、まだ先の話だと感じる方が多いかもしれません。ただ、実際の相続の現場から見ると、遺言書が一通あるかないかで、遺された家族の負担はまるで違います。話し合いがまとまらず調停まで進んだ事案の多くは、「本人の意思が形になっていなかった」ことから始まっています。
この記事では、遺言書の基本的な作り方と、せっかく書いたのに無効になってしまわないための注意点をまとめます。
方式は主に2つ――自筆証書と公正証書
実務でよく使われる遺言書は、自分で書く自筆証書遺言と、公証人に作ってもらう公正証書遺言の2つです。
自筆証書は費用がかからず手軽ですが、方式の不備で無効になるリスクや、発見されない・改ざんを疑われるといった弱点があります。公正証書は費用と手間がかかる分、方式面で無効になる心配がほぼなく、原本が公証役場に保管される安心感があります。
自筆証書遺言のルール
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分の手で書き、押印することが必要です(民法968条)。パソコンで打った本文は認められません。
ただし2019年の改正で、財産目録の部分だけはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付が認められるようになりました(各ページへの署名押印が必要です)。また2020年からは、法務局に遺言書を預けられる保管制度が始まり、これを使えば紛失や改ざんの心配がなくなるうえ、相続開始後の検認手続きも不要になります。自筆で作るなら、保管制度の利用を検討する価値は十分あります。
公正証書遺言という選択
公正証書遺言は、公証人が本人の意思を確認しながら作成し、証人2名が立ち会います。方式不備で無効になる心配がほぼなく、家庭裁判所の検認も不要。相続開始後、すぐに内容を実現に移せます。
財産の種類が多い方、相続人の関係が複雑な方、認知症などで後々「あの遺言は本人の意思だったのか」と争われる不安がある方には、公正証書をお勧めすることが多いです。
無効・トラブルになりやすい書き方
- 日付がない、「令和◯年◯月吉日」のような特定できない日付
- 夫婦連名で1通の遺言書を作る(共同遺言は禁止されています・民法975条)
- 「あとは家族で仲良く分けてほしい」のような曖昧な記載
- 不動産や預金口座の特定が不十分で、どの財産を指すのか読み取れない
形式は整っていても、内容が曖昧なために解釈をめぐって争いになる例は少なくありません。誰に・どの財産を・どう渡すのかを、特定できる形で書くことが大切です。
遺留分への配慮を忘れずに
配偶者や子どもには、遺言でも奪えない最低限の取り分(遺留分)があります。特定の相続人に財産を集中させる内容の遺言は、後に遺留分をめぐる金銭請求の火種になることがあります。
遺留分を踏まえた配分にする、生命保険を活用する、付言事項で理由を丁寧に残すなど、争いを小さくする工夫はいくつもあります。ここは専門家の関与が生きる部分です。
弁護士に依頼するメリット
- 方式・内容の両面で、無効や解釈の争いを防ぐ文案を作れる
- 遺留分や税務も視野に入れた配分を設計できる
- 公証役場とのやり取りや証人の手配を任せられる
- 遺言執行者への就任まで含めて、実現までを見届けられる
よくあるご質問
Q. エンディングノートでは駄目ですか?
エンディングノートに法的な効力はありません。想いを伝える手段としては有意義ですが、財産の行き先を決めるには、法律の方式を満たした遺言書が必要です。
Q. 一度書いた遺言書は変えられますか?
いつでも書き直せます。新しい遺言書を作れば、前の遺言と内容が重なる部分は新しいものが優先されます。状況が変わったら作り直す前提で、まず現時点の意思を形にしておくことをお勧めします。
Q. 遺言執行者とは何ですか?
遺言の内容を実際に実現する役割の人です。預金の解約や不動産の名義変更などを担います。遺言書の中で指定でき、弁護士を指定しておくと相続人間の対立があっても手続きが進めやすくなります。
遺言書のご相談は当事務所へ
大元・秋山法律事務所(広島市中区・八丁堀)では、遺言書の文案作成から公正証書化のサポート、遺言執行までお受けしています。元気なうちに作っておくのが、遺言書のいちばんの活かし方です。思い立ったときにご相談ください。
