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遺産分割をしないとどうなる?|10年ルールと相続登記の期限(2027年3月31日)を弁護士が解説

弁護士 大元和貴

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遺産分割をしないとどうなるのか(10年ルールと相続登記の期限)

遺産分割そのものに期限はありません。いつでも話し合って分けることができます(民法907条1項)。ただ、分けないまま時間がたつと、不利益が少しずつ積み重なります。相続開始から10年を過ぎると、生前贈与(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)を主張できなくなり、原則として法定相続分で分けることになります(民法904条の3)。不動産があれば、相続登記を申請する義務もかかります。2024年4月1日より前に始まった相続で、不動産を相続したことを知っている場合は、2027年3月31日が期限です。

ご相談でよく伺うのが、「親が亡くなって何年もたつが、実家の名義はそのまま」「兄弟と話がまとまらず、預金も手つかず」という状態です。急ぐ理由がないように見えても、放置した分だけ、あとで選べる方法が減っていきます。何が起きるのかを順に整理します。

遺産分割に期限はない。けれど、放置してよいわけではない

民法は、相続人は「いつでも」協議で遺産を分けられると定めています(907条1項)。10年たったら遺産分割ができなくなる、ということはありません。インターネット上で「10年で分割できなくなる」と書かれているのを見かけますが、正確ではありません。

変わるのは、分け方の中身です。そして、分けていない間も、登記や預金の払戻し、相続人の世代交代といった問題は待ってくれません。

10年を過ぎると、特別受益と寄与分が主張できなくなる

2023年4月1日に施行された民法904条の3により、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、特別受益(生前に多額の援助を受けた相続人がいる場合の調整)と寄与分(親の介護や家業への貢献の評価)の規定が使えなくなりました。原則として、法定相続分どおりに分けることになります。

たとえば、兄だけが住宅購入資金の援助を受けていた、長女が長年介護を担ってきた、という事情があっても、10年を過ぎると、それを遺産分割に反映させるよう求めることは原則としてできません。相続人全員が合意すれば別ですが、もめている事案ほど合意は期待できません。

この規定は、施行前に始まった相続にも適用されます。経過措置として、「相続開始から10年」と「施行から5年(2028年3月31日)」のいずれか遅いほうまでは猶予があります(令和3年法律第24号附則3条)。2018年3月31日までに始まった相続は、2028年3月31日が区切りです。

10年の期限を止めるには、期限内に家庭裁判所へ遺産分割の調停や審判を申し立てる必要があります(904条の3第1号)。相手に手紙を送るだけでは足りません。

不動産は、相続登記の期限に注意(2027年3月31日)

2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人には、相続の開始と取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。

施行前に始まった相続も対象です。すでに不動産の取得を知っている場合は、施行日から3年、つまり2027年3月31日が期限になります。

遺産分割がまとまらず、誰の名義にするか決められない場合は、「相続人申告登記」という方法があります。自分が相続人であることを登記官に申し出れば、期限内の義務は果たしたものとみなされます(同法76条の3)。ただし、その後に遺産分割がまとまって不動産を取得した人は、分割の日から3年以内にあらためて登記を申請しなければなりません。申告登記は、あくまで時間を確保するための手段です。

預貯金は、分けるまで自由に引き出せない

亡くなった方の預金は、金融機関が死亡を知った時点で取引が止められ、原則として遺産分割がまとまるまで払い戻せません。

当面の生活費や葬儀費用のために、相続人が単独で払戻しを受けられる制度はあります(民法909条の2)。ただし、金額は「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」で、金融機関ごとに150万円が上限です。まとまったお金を動かすには、やはり遺産分割が必要です。

相続税の申告が必要な場合も、期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月)までに分割がまとまっていないと、配偶者の税額軽減などの特例を当初の申告では使えず、分割後にあらためて手続きをすることになります。税額の計算は税理士と連携して確認します。

放置している間に、相続人が増えていく

分割しないまま相続人の誰かが亡くなると、その人の配偶者や子が、遺産分割の当事者として加わります。10年、20年と放置された事案では、会ったこともない親族を含めて十数人の合意が必要になることも珍しくありません。

相続人の中に行方の分からない人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人を交えて分割を進める方法があります(民法25条)。手続きに時間がかかるため、気づいた時点で動き出すほうが負担は小さくなります。

不動産の共有状態も長引きます。2023年の改正で、相続開始から10年を過ぎると、遺産に含まれる共有持分について、通常の共有物分割の手続きで解消を求められるようになりました(民法258条の2第2項)。他の相続人から、裁判所に分割を求められる可能性がある、ということです。

話し合いが進まないときは、調停・審判へ

協議がまとまらない、あるいは協議に応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所に分割を請求できます(民法907条2項)。通常はまず遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて話し合います。調停が成立しなければ、審判で裁判官が分け方を決めます。

調停の申立ては、先ほどの10年の期限を止める効果もあります。特別受益や寄与分を主張したい事情があり、相続開始から年数がたっている場合は、まず期限を確認してください。

弁護士に依頼するメリット

遺産分割の先送りは、どこかで必ず清算を迫られます。早めにご相談いただくと、次のような点でお手伝いできます。

  • 10年の期限や相続登記の期限など、ご自身の事案で「いつまでに何をすべきか」を整理できる
  • 特別受益・寄与分として主張できる事情を、証拠とともに組み立てられる
  • 連絡の取れない相続人や協議に応じない相続人への対応、調停・審判の代理を任せられる
  • 登記は司法書士、相続税は税理士と連携し、手続きの抜けを防げる

よくあるご質問

Q. 親が亡くなって15年たちます。今からでも遺産分割はできますか?

できます。遺産分割そのものに期限はありません。相続開始から10年を過ぎていても、2018年3月31日までに始まった相続であれば、2028年3月31日までに家庭裁判所へ遺産分割を請求すれば、特別受益や寄与分を主張することができます。その日を過ぎると、原則として法定相続分を基準に分けることになります。

Q. 実家の名義が亡くなった父のままです。遺産分割がまとまらないと登記はできませんか?

法定相続分による相続登記や相続人申告登記であれば、遺産分割の前でも申請できます。2027年3月31日の期限(施行前に始まった相続の場合)に間に合わせるため、まず申告登記をしておき、遺産分割がまとまってから名義を移す方法もあります。どちらが適しているかは、不動産の数や相続人の状況によって変わります。

Q. 相続人の一人が話し合いに応じません。どうすればよいですか?

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では相手方にも呼出しがあり、調停が成立しなければ審判に移って裁判官が分け方を決めます。相手と直接やり取りすることに負担を感じる場合は、交渉の段階から弁護士が窓口になることもできます。

遺産分割を先延ばしにしている方は当事務所へ

大元・秋山法律事務所(広島市中区・八丁堀)では、長く手つかずになっていた遺産分割や、相続登記の期限が迫っている方のご相談をお受けしています。相続人が何人いるのか、何が遺産なのかが分からない段階でも構いません。戸籍と財産の洗い出しから一緒に進めます。

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