離婚の話し合いは、親権、養育費、財産分与と進み、年金のことは後回しになりがちです。「離婚してから手続きすればよい」と思っているうちに、期限が過ぎてしまった。そんな話も耳にします。年金分割の請求期限は、2026年4月の改正で2年から5年に延びました。ただし、延びたのは2026年4月1日以後に離婚した方からで、それより前に離婚した方は2年のままです。
年金分割は、厚生年金の記録を分ける制度
年金分割とは、離婚したときに、婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬)を夫婦で分け合い、それぞれの将来の老齢厚生年金に反映させる制度です。分けられるのは厚生年金の部分だけで、国民年金(老齢基礎年金)の額は変わりません。離婚のときにお金が動くわけではなく、分割後の記録をもとに、年金を受け取れる年齢になってから、計算された額が支払われます(日本年金機構)。分割の効力は、請求のあった日から将来に向かってだけ生じます(厚生年金保険法78条の6第4項)。
合意分割と3号分割は、何が違いますか
合意分割は、夫婦の合意か裁判所の決定で分ける割合を決める制度です。3号分割は、相手の合意なしに2分の1ずつに分ける制度です。
合意分割の対象は、2007年4月1日以後の離婚で、割合の上限は2分の1です(厚生年金保険法78条の3第1項)。3号分割の対象は、会社員や公務員に扶養されて国民年金の第3号被保険者だった期間のうち、2008年4月1日以後の分で、請求はその期間のあった側が単独でできます。合意分割を請求すると、婚姻期間に3号分割の対象期間が含まれていれば、3号分割も同時に請求されたものとみなされます(日本年金機構)。なお、分割される側が障害厚生年金の受給権者で、対象期間がその額の基礎になっている場合、3号分割は認められません。
請求の期限は、離婚の翌日から5年
期限は、離婚が成立した日の翌日から5年です(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書、同法施行規則78条の3第1項。3号分割は同規則78条の17第1項2号)。この期間を過ぎると請求できません。
例外として、5年が過ぎる前に割合を決める調停や審判を申し立てていて、その調停の成立や審判の確定などが期限の6か月前から期限のあとまでの間になった場合は、成立や確定などの日の翌日から6か月以内に限り、請求できます(同規則78条の3第2項)。
2026年3月31日以前に離婚した方は、2年のまま
2026年4月1日より前に離婚等をした場合の請求期間の制限は、従前の例による、と改正法の附則に定められています(令和7年法律第74号附則10条)。日本年金機構の案内にも、令和8年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内とあります。
たとえば2025年10月に離婚した方の期限は、離婚の翌日から2年後の、2027年10月ごろです。すでに2年を過ぎている方が、5年に延びたことで請求できるようになるわけではありません。離婚の日がいつだったか、まず確かめてください。
手続きは、どう進めますか
手続きは、年金事務所で割合を決めるための情報を取り、割合を決めて、標準報酬改定請求書を出す、という順に進みます。最初に「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に出すと、分割の対象期間や割合の範囲などを記した情報通知書が出ます。これは離婚の前でも後でも請求できますが、請求期限内に出す必要があります。
割合を夫婦の話し合いで決めたら、公正証書の謄本などを添えるか、合意書を持って夫婦(代理人も可)がそろって年金事務所に行き、請求書を出します。まとまらなければ、家庭裁判所に申し立てて割合を定めてもらいます(厚生年金保険法78条の2第2項)。3号分割だけなら、相手の合意は要らず、請求する側が単独で出せます。
年金分割と財産分与は、別の手続き
年金分割は、年金事務所に請求する厚生年金の記録の分割です。預貯金や不動産などを分ける財産分与(民法768条)とは、窓口も根拠も別になります。どちらも離婚から5年という期間がありますが(2026年3月31日以前の離婚は、どちらも2年です)、それぞれ別に進みます。財産分与の基本は財産分与のコラムにまとめています。離婚の協議書や公正証書を作るときに、年金分割の割合もあわせて入れておけば、あとの請求で使えます。
弁護士に相談すると
婚姻期間、お二人の働き方(会社員・公務員・自営業など)、離婚の予定日または離婚した日を伺って、年金分割の対象になる期間と期限を整理します。そのうえで、情報通知書を取る段階から、割合を決める話し合い、まとまらない場合の調停まで進めます。期限のある手続きです。離婚が決まっていなくても、期限の見通しだけは早めに確かめておいてください。結果のお約束はできませんが、状況に合った手順をお伝えします。
よくあるご質問
Q. 年金分割をしないと、どうなりますか?
分割しなければ、婚姻期間中の厚生年金の記録は分けられず、それぞれ自分の記録だけで年金額が計算されます。期限を過ぎると請求できなくなります。相手が会社員で、ご自身が第3号被保険者だった期間が長い場合は、ご自身名義の厚生年金の記録が少なくなりやすいので、確かめておく価値があります。
Q. 相手が自営業で、厚生年金に入っていない期間は対象になりますか?
対象になりません。分割の対象は、婚姻期間中の厚生年金の記録です(日本年金機構)。国民年金だけの期間は、年金分割では分けられません。
Q. 相手が年金分割の話し合いに応じてくれません。どうしたらよいですか?
3号分割の対象期間は、相手の合意なしに請求できます。合意分割の割合がまとまらないときは、当事者の一方の申立てで、家庭裁判所が割合を定めます(厚生年金保険法78条の2第2項)。いずれも離婚から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)の期限内に動く必要があります。
年金分割・離婚のご相談
大元・秋山法律事務所(広島市中区八丁堀)は、年金分割を含む離婚のご相談をお受けしています。ご予約・ご紹介の方は初回30分無料です。
